お知らせ  

毎日ご覧いただきまして誠にありがとうございます。
更新が滞っておりまして、申し訳ございません。

都合により、閉店いたします。

絶筆だったこと、誠に申し訳ございません。
また、気力と体力が戻ったらお会いしましょう。

筆者の新ブログは、こちら↓を御覧くださいませ。

http://cat.ap.teacup.com/tokyo_042/

お役にたちます。
きっと。
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2010/10/21

第9話 遠回りな近道  

ガタッガタガタガター・・・っ!!
バタン、
「jk?あsdfghjmk,l。;・?!!?」
むんず。
がらがらがら。
ひょーいっ。
って、
いっでえぇぇぇぇぇっ!
ふ、不意を突かれたのでニャンコ先生回転もできずに
背中から落ちたーっ!
土の上で良かったーっ!コンクリートなら、激痛っ!!

叫んでる場合じゃない。
ん?そうか。気づけばすっかり夜になっていたのか。
この場所の持ち主だったか?
ニンゲンが突然入ってきて
何やら叫びながら我が輩を掴んで
それでもって放り投げんでも良いのになあ。
に、しても
雨風しのげる、秘密の場所が手に入ったと思ったのになあ。
何たって、入り口は我が輩が入るのがやっとのスペース。
小さいニンゲンも入って来られないので
しばらくはのんびり生活出来ると思ったのに。
まさか、別にニンゲンが入れる扉があるとは、な。


我が輩の主人を名乗るあの男のもとに
1本の電話がかかってきた。

それがのちほど、吉と出るのか凶と出るのか?
それから数カ月を経ただけでは、まだ答えは出ないほど
難解な問題の始まりを告げるゴングとも言えるベルが鳴る。

鳴る、
と言っても、掛かってきたのはケーキ店での仕事中。
携帯電話の音は鳴っていない。
ブルブルという感触を思い出しながら、主人は、
溜まったカラの板重をビルの地下に持って行くついでに
携帯電話をエプロンのポケットから取り出し
先方に折り返した。

「どう?あれから。」

少々、独特の掠れ声の女性は、
何か良き知らせを自分は持っている
とでも言いたそうなテンションで電話口に出た。
主人は
この掠れ声の女性Sには、このところ世話になっている。
女性自身の性格が「世話好き」というのを取り払っても
何かと頼りにしていたことは間違いない。

実は主人も、
これまで考えられなかった、有り余る「脳の時間」を得て
様々なことに考えを巡らせる余裕が出てきた。
しかし、そろそろまとめなければならない時期に差し掛かり
正確に言うと
「とりあえず」人生のプランを決める時期に差し掛かり
このまま、もう一度気持ちを立てなおして勉強するのか
それとも、元いた世界に身を戻すのか考えている時であった。

考えているときに、後先かまわず行動するのは
主人の悪い癖でもある。
掠れ声の女性S氏を含め、数人の知人に連絡をし
何か、自分の出来る仕事がないかと
ここ数ヶ月の間に聞きまわっていたのだ。

そのなかのひとつが、
元の職場で後輩だった女性A氏に紹介された
テレビ番組の収録に立ちあって、その文章を書き起こす
ギャラ2万円の仕事であったり
先程の掠れ声のS氏に紹介されて
ラジオ番組の文章を書く仕事であったり
まあ、
フリーランスでマスコミと呼ばれる世界の仕事をし、
ケーキ店での薄給を少しでも補えればと
出来る限りで行っていたのだ。

とはいえ、戻ってきた日本は、
発つ前のそれとは大きな違いがあった。
とある国のとある銀行の破綻の煽りを受けて
思うように仕事にありつけられないのは
既述の通りである。

数々の知人が紹介してくれる細かい仕事は
主人にとって、この上なく有難いものである。
小さな額であっても
それは主人にとって大きな貴重なものなのだ。
しかし、
その世界に戻るべきなのか?
このまま違う世界での生き方を模索すべきか?
迷いがあるのも事実である。
もっと正確に言えば
目指したものを途中で投げ出さざるを得なくなり
新たに突入した社会で迷いながら
大元の世界をチラ見して生きる生き方に
些か疑問を感じていたのかもしれない。

そこに、1本の電話がなる。

電話口の掠れ声のS氏はこう言う。
「N局の彼、覚えてる?
 11月くらいに会ったじゃない。
 彼が、番組やらないか?って。」

青天の霹靂である。
2月終わりの寒空の澄んだ空気とは裏腹に
心は
厚い雲から抜け出すことに躍起になっていた。
そこに、思いもかけぬ連絡が来たのだ。


ふと、空を見上げてみた。
投げ出された悔しさや痛みを忘れるため
言い訳的に見上げたのではない。
本当に、ふと見上げざるを得ない体勢だったのもあるが
とにかく見上げた。
星だ。星と呼ばれる無数の点が空を覆っている。
真夏の間は、あまり見つめることの無かった空には
数えきれない程の光が溢れているのだ。
点は点を広げる。
なんとなく、感傷的な気分になり
再び我が輩は、ハナコの家の屋根を目指した。


3

2010/10/3

第8話 プライドと意義  

何気なく、暖かい日差しで早朝から目を覚ますと
どこか懐かしい雰囲気に引き戻される。
そうである。
ついこの間までの極暑では、
朝5時前から降り注ぐ日差しと熱が
目覚まし時計のように、激しく攻撃してきた。
このところ、それも和らいできたが
時々こうして、秋から夏に戻るときもある。
にしてもだ
やはり、外の空気は日増しに寒風を伴ってきている。
外で生活しているとよくわかる。


我が輩の主人を名乗るあの男
春の気配が見当たらない極寒のカウンターに立ち
相変わらずケーキの名前もろくに覚えられずに
パンばかりを売る日々を送っていた。

ほかの従業員は、プライドを持って仕事に従事している。
時給の、それほど稼ぎが良くない
などということは関係なく、働く意義を持って。
主人とて、その意識を持っていないわけではない。
いやむしろ、これまでの波乱に満ちた2年の間に
何事にも真剣に向き合う頭を持つことになった。
当然、
ケーキの名前を覚えることができない40男の頭脳でも
寒風吹きすさぶレジカウンターで
自分の出来る範囲の仕事はこなすようになっていた。

ちょうどその頃、
別の向きからも新たな風が吹き始めていたのも事実だ。

もはや
日本を離れるときに、主人は自分の退路を絶っていた。
それぐらいの意識がなければ敵う相手ではないことくらい
日本を経つ数年も前から、重々承知し覚悟していたからだ。
だが、実際に糸を切られた今、
凧はなんのために空を飛んでいるのかも理解できず
ただただ、大空からいつ落ちるのかと不安になっている。
空虚とまではいわないが
ケーキ店での仕事を続けることで、先には何があるのか?
売り上げを伸ばして、店長になることを夢見て
最終的には本社に配属されることを希望して
そして、社長でも目指すべきか?

それも悪くない。
しかし、どこか腑に落ちない。

主人はどうにも、変な思考を持っている。
もともと、一般とは少しズレた世界で生活してきた。
簡単にいえば、人に提供するサービスを作る仕事。
まあ言ってしまえば、当ブログのようなものだ。
朝も夜もなく、何かを発信するために働いてきた。
そこから180度とまでは言わないが
162度くらい転回した、まったく違う仕事に就こうと
日々勉強してきたが、それも結果は、
糸を切られて今は空を舞っている。
今度はそこからさらに175度くらい回転させられて
こうして、レジを打ちながらリボン掛けの練習だ。
特に不満はない
といえばウソになるが、大きなストレスもない。
問題といえば、
今後生活に破綻をきたす恐れのある
収入についてくらいか。
それとて、休日はあるのだから
掛け持ちをすればなんとかなりそうだった。
そう。
掛け持ちアルバイトのように、主人も少々だけ
以前の仕事に関係があるようなないような
そんな仕事をちょぼちょぼとこなしてはいた。
ギャラとして2万円
そのために半日中ビデオを見ている
なんてこともあった。
一度は締切りに間に合わなくなりそうになり
ケーキ店での仕事を休んだほどだ。仮病をつかって。
本末転倒も甚だしい。
いや、本末転倒なのか?
収入の天秤にかければ、ケーキ店のほうが大きい。
もう一方は、安くても1日じゅう没頭できる仕事。
どちらが本末転倒なのか?
心のなかでザワつく感覚に囚われる。
主人は、
いったい何のために糸を切られて空を漂っているのか?

スケジュール帳は、ケーキ店のシフトと
掛け持ちしている少々の「書き物」仕事で埋まっている。
だが実際に流れる時間は
日本を離れる以前に比べたら遥かにのんびりしたものだ。
物を考える時間は有り余っている。
脳が、使用するスペースを余らせているのだ。
そういった瞬間からニンゲンは
焦りという感覚に囚われ始めるのであろう。

そこに、1本の連絡が入った。


強い日差しに久しぶりに強制的に目覚めさせられ
仕方がなく影を求めて歩いてふと、
例の店の前に来ていた。
すっかり、店内は片付けられ
ただのスペースだけがぽっかりと空いていた。
どうやら
次なる店でもオープンさせるのであろうか?
それならそれでいい。
商店街にシャッターばかりが増えても仕方がない。
ただそれでも、
あの男にとっては少し淋しいものだろうなあ。
などと考えながらも、
裏からその店内に入ってみた。うむ。予想通り。
ここは広々としていて、涼しくて気持ちがいい。
また再び、ここで寝るとしよう。

5

2010/9/23

第7話 夏と秋の狭間で  

なにか、祭りのあとの寂しさを感じる。
たしかに、大げさとも言える灼熱が続いたことで
暑さに慣れないニンゲンたちのみならず
我が輩ら毛むくじゃらの生き物もひぃこら言っていたが
いざ、その暑い季節も終盤を迎えて急に冷たい雨が降ると
なんともいえない、物悲しさを覚えるものだ。

夏とは、祭りのような騒がしさと熱を帯びた
特殊な季節なのであろうか?好き嫌いは別にして。
だから余計に、終わりが近づくとかようにも寂しいのか。


我が輩の主人を名乗るあの男。
飲食店や雑貨が集まる私鉄駅の狭い街で
元上司のC氏と、居酒屋の一室で向かい合っていた。
3月も近いというのに、一向に極寒を脱しない。
異常気象ではないのか?
などと考え、今年は夏が来ないのではないか、と
余計な心配までしていた頃であるが
本来心配しなければいけなかったのは、この先の人生であった。

細かいことを言い出せばキリがないが
大きくは、ケーキ店での勤務に不満があるわけではない。
それまでの、屋根壁の塗装を斡旋する営業マンや
クリーニング店での受付業務も、悪くはなかった。
それは当然、角度を変えれば良くない面もある。
壁の営業では、既述のように苦労も多かった。
自分は営業職に向いていない、という思いにも押し潰された。
ケーキ店においても、女性店員に囲まれて働き
その中にあっては、独特の厳しい視点・指摘があるのも事実だ。
具体的には、やれリボンの結び方が下手くそだとか
あるいは、ケーキの名前を覚えないことに苛立たたれたりとか
そうした、小さなプレッシャーやストレスはジワジワある。
クリーニング店での、あの、柔らかい日差しと優しい感覚
そんなシアワセな空間にあったとしても、
客の来ないカウンターでボーっと待っていることは辛い。

大きくは、様々な経験をしていることに喜びを感じながらも
細かいところでは、不満がないわけではない。

そんな日々の合間、休日の下北沢で夜
年上の後輩S氏と、それとなく酒を呑む予定だった主人は
なぜか、元上司C氏と対面している。
不思議な状況ではあったが、別にC氏と仲が悪いわけではない。
むしろ、以前から話も合う二人は
S氏の到着を待っている間の穴埋め、などと言い訳しながら
ついつい数杯のビールを喉の奥にしまっていた。

何を話しているわけでもない。
強いて言えば、テーマは主人のこれまでの行動。
いい環境だったクリーニング店は、給料面から生きていけず
なくなく10日ほどで去ったこと
その後に入った壁の営業マン時代には
様々な友人たちを得ることが出来たが、
その代償として、腰を悪くするほどの過酷さを強いられたこと。
しかし一方で、繰り返し電話をして営業を仕掛ける際
電話口の人々に怒られなじられ続けたことで
いくぶんかは心も強くなったこと。
同時に、人はなぜ簡単に怒るのか?
それを自分に照らし合わせて反省し、怒らなくなってきたこと。
そして、女性に囲まれながらケーキ店でパンを売る
40独身男がやることなのかどうか、
逆に、そうした行為がどれだけ自分を見つめ直すのか?
といったことなどを、酒の勢いで話し込んでいた。

この数カ月は、
様々な職種に触れることで
日本に帰ってきた意味や意義を少し感じ始めていた。
確固たる目標を持って日本を離れ、勉学に勤しんできた。
しかし結果は、思いに届かず
それどころか、すぐにでも生きていく術を探さねばならない
そんな当たり前の過酷に晒された。
だからといって、すぐには次なる人生を考えて正職を探さず
折角だからと、様々な職種を数カ月間で経験してきた。
それもこれも、何のためなのか?
おそらく主人のなかでも、この先に次がある
そう、朧気な見越しが存在していたからなのではないか?
つまり、
ここでこうしてC氏と対面していることは
次なるステップへの大きな意味があり
この場が訪れるためには、様々な職業経験が必要だったのだ。

年下の後輩S氏の遅刻による、元上司C氏との対面。
これが
その後の人生の、大きな舵取りをすることになるとは
この時点では、主人は気づく余地もなかった。


何かが違うと感じて数日。
秋が近づいた寂しさのお陰もあって、漸く気づいた。
そうだ
先日まで存在していたクリーニング店が無いのだ。
どうやら、閉店ということになったらしい。
夢小金井商店街も、大昔の活気は疾うの昔に去り
いまではそれこそ、シャッター店が軒を連ねる。
そのひとつに、
主人がついこの間まで世話になっていた
あのクリーニング店も、仲間入りしてしまったというわけだ。
なにか、寂しい限りである。

8

2010/9/10

第6話 雨が雪に変わる時  

ん?な、何かが降ってき・・・。
ど、どうわああああああああ!
み、水が大量にーっ!!

やね、やね、やねに寝てたら
きゅ、きゅうに水が大量に来たーっ!
雨だ。
そうだ。雨と言うヤツだ、これは。
それにしても久しぶりだな。
しばらく遭っていなかったので忘れていたが
そうだ。地上では雨というのが降る時がある。
そしてニンゲンというやつは
傘とかいう物で、水に濡れるのを避ける。
我が輩は傘を持っていないので、
ハナコの家の縁の下に逃げるとしよう。


我が輩の主人を名乗るあの男
その頃ちょうど、
雨ではなく雪に難儀しながらケーキ店でパンを売っていた。
3月も近い、春と呼ばれる季節が目の前というのに
東京はその時期が一番寒いとみえて
もはや、終バスに乗り遅れたからといって
40分歩いて家まで帰るには、相当の気合いが必要だった。
主人が働いていた荻窪駅はJRの駅。
夢小金井から最寄のJR駅まではバスで移動していた。
しかし、最終のバスはことのほか早く終わる。
少しでも残業してしまうと、それに乗ることができない。
タクシーに乗る贅沢もできず
極寒の季節が訪れるまでは、歩いて家まで帰ったこともあった。
終バスが無くならないまでも、遅い時間は便数が少ない。
どのみち数十分も、極寒の下バス停で待つことになるのならば
いっそ歩いた方が良い、と判断して実行したこともあった。

クリスマスという、
洋菓子店にとって最大のイベントを乗り切り
バレンタインという第二のイベントも乗り切り
次に訪れる、ホワイトデーという商戦を前にして
少々の落ち着きを取り戻していたときであったが
主人の心は、些か乱れていた。

自分はこの先どうなるのだろう?
という不安よりもむしろ
自分はこの先どうしたいのだろう?
という自問自答の繰り返しに辟易としていたからだ。
そんな折、
ひとりの男性と再会することになった。
男性S氏は、以前に主人が勤めていた会社の後輩だ。
後輩と言っても、中途採用で入ってきた主人よりも年上だ。

主人はそれまでにも、
ケーキ店の収入だけでは生きていけないことから、
知人を使って、少々内職を斡旋してもらっていた。
ちょっとした文章を書く仕事である。
ところが、それも二束三文。
年上の後輩S氏に会うことで、何か光明が得られる
と考えてはいなかった、といえばウソになる。
だが、直接の収入増につながる何かが存在している
とも考えられない。
その時点では、純真に懐かしい顔との再会によって
自問自答からの解放と
女性に囲まれてのストレスフルな生活からの忌避を
望んでいたことだけは確かだった。

ところが、
その年上の後輩S氏は、時間通りに待ち合わせの場所に現れず
代わりに、元上司C氏が主人の目の前に現れた。


しかし、なんだなあ。
雨というヤツが一気に降ってきたら
少々あの、灼熱のような空気から解放された。
ほんとうに、
自然とはかように我が輩らの想像を超えた力を持つものなのか。
ん?
ふと、雨上がりにハナコの家を離れ
それとなく歩きたどり着いた先で顔を上げてみたところ
ここ数日感じていた、違和感の原因に気がついた。
そうか、そういうことだったのか。


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